記事番号: 1-5350
公開日 1900年01月01日
どの地域においても起業する場合、もしくは既存ビジネスでの企業活動を継続する場合において、日々変化する顧客ニーズを汲み取るなど商圏内での変化を察知しながら、継続的に売上げを作り出すのは大変なことです。短期的にはこれまでの経験則や嗅覚(アニマルスピリッツ)などに基づく経営判断が有効に作用することもありますが、しかしながら事業の継続性を視野に入れた場合、経験則のベースとなる客観的な情報に基づきある程度の仮説を立て、それらを日々検証していくことが求められます。そのような中、事業内容や各自の業種業態によって、「どのような情報が必要か」、「集めた情報をどうビジネスに活かす(置き換える)か」など仮説の立て方も異なっており、すべてのビジネスに役立つ万能な情報はありません。
そこで、今回は仮説立案の精度を高められるよう、基礎中の基礎ではありますが、飲食品などの最寄り品を扱う小売店で行なわれる情報収集に関する視点について整理することで、同業種はもとよりカフェや各種飲食店を展開する場合において仮説を立てる際のヒント(ネタ)となれば幸いです。
情報収集に関しては、基本的な「天候・曜日・催事」に関するものに併せて「商圏の変化」に作用するものに大きく分けられます。まず、前者の「天候」については、浦添市に限ったことでなく近隣市町村も同様であることから、その中でも「曜日」や「催事」にフォーカスして整理したいと思います。それらは居住者に連動して動くことが考えられ、例えば、給料日(ボーナス支給日も含む)や年金支給日などの特定日に着目することで、心理的な解放感にあふれ消費活動が活発化するタイミングを町丁ごとに予想することができます。もし、地域の習慣・風習が色濃く残る町丁があるのならば、行事や祭りなどの催事では人の動きが活発化することが想定され、それらにマッチした商いの場を構築することで特定の需要(沖縄での消費の強さを示す一因とも考えられる)を取り込むことができるでしょう。
さらに周辺に立地する事業所に目を向けると、商売上の「五十日(ごとおび)」などで納期が定められているほか、資金決済・回収も含めて企業活動が活発化するタイミングも見落とせません。いずれにおいても各町丁における居住者や事業所のボリュームや特質によってさまざまとなります。
他方、後者の「商圏の変化に作用する事象」については、前述の内容と重複するところもありますが居住者や事業所などの人口動態の動向(これまでのコラムを参照のこと)のみならず、都市開発(県や自治体の政策等)の観点から大型の公共工事の動向や商業施設を含む事業所の開設動向などを押える必要があります。ちなみに、過去事例をみますと沖縄都市モノレール開業による駅周辺での建築効果(累計)は那覇市内の当該町丁を中心に周辺地域へも及んでおり、また、沖縄市にあるイオンモールライカム沖縄の建設にあたっては工事関係者の流入なども含めて当該市や周辺地域も含めて建設効果に加えて消費効果をもたらしたと考えられます。その後、オープン稼働により周辺町村において既存商店から一部流出の動きやインバウンド需要などの需要創造により商圏へ影響を与えたとみられます。
今後、浦添市内ではモノレールの延伸に伴う交通利便性の高まり、大型商業施設の開業により周辺地域やインバウンド需要などまで含めた流入機会の増加を想定すると、周辺地域との競合などもあるにせよ、短期的に事業者や居住者が増加する可能性があります。
このように、商圏の変化を読み解くための視点として、起業する場合には商圏分析を通じた商売のターゲットと周辺エリアの特徴を整理することができ、既存ビジネスにおいてはマーケットの変化を読み解くためのヒントとなりえます。将来的に起こり得る事象を踏まえて、当該町丁や浦添市内の周辺地域からの視点、さらに広域的に捉えることで時間軸に応じた商圏の変化をイメージすることで、中期的なビジネスのあり方を発案しやすくなると思います。