記事番号: 1-3533
公開日 1900年01月01日
今回のコラムは、マクロ経済データや景況調査などさまざまな指標を用いて、近年の沖縄経済の動向を振り返りながら、今年の見通しについて記したいと思います。
1.沖縄経済の回顧
近年の沖縄経済について、企業の景況感などを用いながら振り返ってみましょう。
(1)業種別景況感の動向
企業の景況感をみると、このところの観光の好調さに加えて、個人消費や建設での堅調さがキープされていることから全業種としてプラスで推移しています。業種別では、建設関連(土木、建築)において、那覇空港滑走路増設や都市モノレール延伸など大型の公共工事や民間の住宅需要などの引き合いでプラスに推移しています。(図表1)また、観光関連(その他サービス業)でも、増勢する観光需要を背景に宿泊業や飲食業などが好調に推移、さらには商業(卸売、小売)においても県内における人口増加や観光関連需要などでプラスに推移していることがわかります。(図表2)一方で、全業種的に共通して言えることですが、資材価格の高止まりや人手不足などを背景とする仕入れコスト増加などが懸念されています。
図表1:業種別DIの推移(全体+第2次産業)
出所:おきぎん経済研究所「おきぎん企業動向調査」
図表2:業種別DIの推移(全体+第3次産業)
出所:図表1に同じ
(2)地域別景況感の動向
地域別にみると、直近では本島全域においてプラスで推移していることがわかります。各地域で建設需要や観光関連需要の増加により企業での受注(引き合い)が増えたことなどが背景となっています。
図表3:地域別DIの推移
出所:図表1に同じ
2.県内の景気拡大は続く(2018年)
近年の流れを踏まえて、2018年の見通しを整理してみると総じて比較的安定的な海外・国内経済成長を背景にし、個人消費や建設関連が概ね堅調に推移、観光関連での好調さが継続することで、全体として拡大基調が続くことが予想されます。
特に、観光関連では、航空路線の拡充やクルーズ船の寄港増等にて東アジア等からの外国人観光客増が本島のみでなく離島への旅行需要の高まりなど好調に推移すると考えられます。継続的に県経済の牽引役になり全体的な数字の押し上げ効果を期待できます。一方で、人手不足をはじめ、交通渋滞・レンタカー事故増加、民泊問題など課題解決への取り組みが強く求められることでしょう。
建設関連では、公共・民間投資において県内経済の好調さを背景に那覇空港滑走路増設・モノレール延伸や大型商業施設・ホテル建設など堅調に推移することが予想されます。一方、シェアリングエコノミーや高齢化社会など多様化する需要への対応、建設資材の高止まり・人手不足などの影響についても注視する必要があります。
個人消費関連では、人口増加や入域観光客数増加などを背景に堅調に推移すると予想されます。
3.マクロ経済データを用いた将来予測(おきぎん地域計量経済モデルによる推計)
図表4では、当社で計量経済モデルを用いて、沖縄経済の足元の実績見込みと今年度の経済見通しを推計しています。結果として、2017(平成29)年度の実質民間最終消費支出は2.2%の伸びが予想され、2018(平成30)年度はその反動もあり、0.8%と低い伸びとなることが予想されます。一方で、2018(平成30)年度の実質民間総固定資本形成が5.5%と高い伸びとなることが予想されており、企業部門での活動が活発化し、企業の収益面での改善が見込まれます。
これらの状況をみると、実質県内総生産は2017(平成29)年度は2.2%の成長が見込まれ、2018(平成30)年度は2.6%の成長となる見通しと予測されます。
図表4:マクロ経済指標の推計値一覧
出所:おきぎん経済研究所「おきぎん地域計量経済モデルによる平成30年度の沖縄経済の見通し」