記事番号: 1-3611
公開日 1900年01月01日
本コラムは、今回が最終となります。これまでの内容を簡単に振り返りますと、昨年度に浦添市内において各集落の各種公表データなどを用いながら、地域周辺のミクロ的な情報を発信してきました。今年度は浦添市を含む沖縄全体まで視野を広げてマクロ的な情報を発信しています。以下に、これまでのコラムの内容を振り返りつつ、浦添市の秘めるポテンシャルを顕在化させるためのヒント(視点)をまとめたいと思います。
1.浦添市を含む沖縄全体を取り巻く環境
浦添市を含む中部エリアにおける企業の景況感もプラスで推移していることがわかります。ちなみに、他地域も併せてみると、直近では本島全域においてプラスで推移していることがわかります。各地域で建設需要や観光関連需要の増加により企業での受注(引き合い)が増えたことなどが背景となっています。
図表1:地域別DIの推移
出所:「おきぎん企業動向調査」より作成
前回のコラムでも触れましたが、2018年の沖縄全体の経済の見通しを整理しますと、総じて比較的安定的な海外・国内経済成長を背景にし、個人消費や建設関連が概ね堅調に推移、観光関連での好調さが継続することで、全体として拡大基調が続くことが予想されます。
2.浦添市のポテンシャル
浦添市は、本島の中南部の中心に位置していることなどから、経済活動や交通アクセス等の面で当該地域のみならず周辺地域との結節点となる重要な地域であるといえます。同市の「企業誘致ガイド」(浦添市 市民部経済観光局 産業振興課)を参照すると、浦添市のポテンシャルを顕在化させるキーワードとして「西海岸開発事業」、「臨港道路浦添線」、「ゆいレール延長」、「米軍基地牧港補給地区(キャンプキンザー)返還、跡地利用など」などが挙げられています。それぞれのキーワードを踏まえて、浦添市が起爆剤となり沖縄全体へインパクトを与え得る点について整理してみましょう。まず、観光面などで期待されることを整理すると、浦添市内に県内小売流通大手のサンエーとパルコによる大型商業施設「沖縄・浦添西海岸計画」において、湾岸道路に面したウォーターフロントの開発エリアに新たな複合交流施設が開業する予定です。県内では、人口増加に加えて多くの観光客が訪れており、県内での消費が堅調に推移していることから、県民によるさらなる需要喚起、多様化する観光ニーズをキャッチアップすることで当該エリアのみならず広域地域への効果が期待されます。
続いて、物流面などで期待されることは、臨港道路浦添線の開通により、本島中北部地区のリゾートエリアに向かう観光道路としての活用のみならず、県内の拠点港である那覇港の物流機能の強化にも繋がることが期待されています。自動車社会である本県においては、臨港道路(機能)整備により、渋滞などによる県民生活や観光リゾートへの影響が緩和されることで、港湾物流の機能強化が図られ、当該地域のみならず広域経済圏での産業活動に寄与することが期待されます。その他に、ゆいレール延長(経塚駅・浦添前田駅・てだこ浦西駅)により、那覇空港や那覇主要拠点と市内東部エリアが繋がることで、交通利便性の向上のみならず、居住環境の機能性も向上し、東部エリアの活性化にも繋がると考えられます。
3.今後、求められること
このところの増勢する観光需要、特にインバウンド需要の動向にウォッチしますと、沖縄経済へインパクトを及ぼすほど拡大しています。各地域においては、この商機をどう取り込み、地域活性化に繋げていけるかが重要な視点となっています。本県では、産業構造上にみても観光がリーディング産業の一つだと言っても過言ではありません。そのような中、ボリューム面だけでなく、質的な面において観光サービスの向上に繋がる取組などの視点も併せて強化していく必要があります。これは、浦添市のみならず他地域においても、地元資源の活用による地域活性化、他の地域資源とのコラボレーションを通じた広域的な取組などで新たな需要の掘り起こしなどによる地域の魅力を高めることも可能となります。また、テクノロジーの進展などで従来では想定していなかった業種業態がビジネスのタネとなり、既存ビジネスの強化・拡大に繋がるケースもあるようです。観光サービスとの掛け合いなどでと創意工夫を凝らすことで、従来のサービスに新たな付加価値を付与することも可能となるでしょう。
このように、地域を取り巻く環境としては、これまでのビジネスから新たなビジネスチャンスを得られ、チャレンジしやすいタイミングだと感じています。他方で、地域住民を取り巻く環境に目を向けると、国内的な人口動態のトレンドとして住民人口の減少やシニア比率の高まりなどの話題も上がっています。本県は、今しばらく人口増加県であり、全国的にみても元気のある地域のようです。しかし、今後は日本国内と同様なトレンドとなり、人口減少社会に転じると言われています。今後は、多種多様な人材が集うような場を提供することが求められます。交流人口が増えることで、創造的な機会も増えることで、継続的な地域活性化に向けた取組が行われることを期待します。