記事番号: 1-3053
公開日 1900年01月01日
実際に飲食店を開業される方は多く、厚生労働省のデータによると、全国に70万店舗超の飲食店があり、沖縄県内でも29,000軒を超える飲食店が営業されています。
特に沖縄県の飲食店は、人口1万人あたりの店舗数として全国1位の210軒となっており、2位の東京都の152軒、3位の長野県が150軒と比較すると、60軒以上も多い数字となっています。
一般的に飲食店は、約3年で全体の20%のお店がつぶれると言われており、非常に競争の厳しい業種です。
その様な業種において、他府県よりも店舗数の多い沖縄県は、まさに、飲食店の激戦区であると言えます。
創業の手段として身近に感じられる飲食店ですが、このように非常に厳しい業界ですので、創業にあたっては、やはり、しっかりと計画を練って開業する必要があります。無計画に開業すると、確実につぶれてしまうということを肝に銘じ、当サイトでご紹介しているスタートアップスクエアの支援を上手に活用しながら、素敵な飲食店をオープンされてください。
準備期間
- 開業費用の貯金を始める
- 同じ業種のお店で働いて、飲食店経営のノウハウを蓄積する
- 調理の技術を磨く
- 必要な資格を取得する
飲食業経験者
- メニューの検討や仕入れ
- 調理
- 接客
- スタッフの教育
- 日々の売上・利益の管理
飲食業経験者の方でも、これらすべてのことを経験されていない方もいらっしゃるかと思いますので、ご自身の経験をチェックして、未経験の仕事がある場合は、それを担当できるお店で経験を積まれることが重要です。
飲食業未経験者
飲食店の開業に、どのような費用が、いくら位必要なのかを把握する。
飲食店の開業には、店舗の取得や改装などにかかる費用として、物件取得費や内装工事費、厨房設備工事費、店舗で利用する備品や食器の購入費、従業員を採用するための求人採用費、店舗の物件選びやオープン時の宣伝費用として、市場調査・販売促進費などの費用がかかります。また、店舗の改装や開店準備中にかかる空家賃など発生します。
ある調査では、小さなカフェなどの開業費用として、平均1,500万円ほどかかっているという調査結果が公表されています。
次に表に、小さなカフェをオープンするケースの参考として、20坪、座席数24席、家賃10万円と想定した場合の開業費用のサンプルを掲載します。開業時は、これらの費用に加えて、お店が軌道に乗るまでの間の運転資金として500万円ほどを加算し、合計2,000万円ほどの資金が必要になってきます。
店舗の条件
坪数(坪) | 座席数(席) | 家賃(円) |
---|---|---|
20 | 24 | 100,000 |
開業費用の内訳
項目 | 金額 |
---|---|
物件取得費 | 1,200,000 |
空家賃 (4か月分) |
400,000 |
不動産仲介手数料 | 100,000 |
設計料 | 1,500,000 |
内装工事費 | 4,000,000 |
厨房設備工事費 | 3,000,000 |
厨房設備工事費 | 1,000,000 |
看板工事費 | 700,000 |
備品・食器、その他 | 1,500,000 |
求人採用費 | 300,000 |
市場調査・販売促進費 | 1,000,000 |
開業雑費 | 1,000,000 |
総額 | 15,700,000 |
飲食店の開業に必要な資格を把握する。
飲食店の開業には、次のような資格が必要となります。それぞれ、短期間で取得が可能ですが、準備期間のうちに忘れずに講習を受け、資格を取得しておきます。
開業に必要な資格
資格名 | 説明 |
---|---|
食品衛生責任者 |
調理師免許を持っていなくても、飲食店を開業できる資格。 取得方法1日6時間の講習を受講する 講習の申込方法一般社団法人沖縄県食品衛生協会へ問い合わせてお申込み 受講料6,000円前後 |
防火管理者(乙種の場合) |
店舗の収容人数が30人を超え、のべ面積が300㎡未満のお店を開業する場合に必要な資格。(甲種はのべ面積が300㎡以上の場合に必要) 取得方法1日5時間の講習を受講する 講習の申込方法一般社団法人沖縄県消防設備協会へ問い合わせてお申込み 受講料6,000円前後 |
飲食店の開業に必要な申請を把握する。
飲食店の開業には、次のような申請を行う必要があります。営業時間帯や開業の形態などによって申請すべき内容が異なってきます。
開業に必要な申請
申請名(申請条件) | 説明 |
---|---|
飲食店営業許可申請(必須) |
申請先保健所 書類提出期限竣工もしくはオープンの10日から2週間前 提出物
|
防火対策物使用開始届(必須) |
申請先消防署 書類提出期限店舗使用開始の7日前 提出物
|
深夜酒類提供飲食店営業許可 (夜12時を過ぎて営業する場合) |
申請先警察署 書類提出期限- 提出物
|
個人事業開業届 (個人事業主として新規に開業する場合) |
申請先税務署 書類提出期限開業後1ヶ月以内 提出物
|
コンセプトを決める
コンセプトとは、
- どこで
- 誰に
- 何を
- どのように
多くの飲食店の中からお客様に選ばれて来店してもらうためには、しっかりとしたコンセプトが重要になってきます。
例えばパスタを食べたいというお客様は、沖縄そば屋さんには来店しません。
また、パスタを食べたいお客様にも、沖縄そばを食べたいお客様にも来店していただきたいからと欲張ってメニューをそろえると、洋食屋さんのような内装の店舗で、お客様が沖縄そばを食べるという、違和感のある店づくりとなってしまいます。
中には、お客様が求めるのであれば
「パスタも沖縄そばもメニューに揃えても良いのではないか?」
と考えられる方もいらっしゃるかもしれませんが、お客様はメニューだけでなく、店内の雰囲気も含めてお店を選ばれます。
パスタを提供するのなら洋食屋さんの店構え、沖縄そばを提供するのなら沖縄料理屋さんの店構えといったように、提供するものと店構えを一致させることが大切です。
加えて
- 家族連れに来てほしいのか
- 若いカップルに来店してほしいのか
- 店舗内での提供だけにするのか
- テイクアウトやデリバリーも行うのか
頭の中に思い描いているお店のイメージをコンセプトシートとして明文化する。
開きたいお店のイメージが、頭の中でなんとなく思い描けているはずです。そのイメージを、出来るだけ具体的に、コンセプトシートとして書き表してみます。
コンセプトシートには、「なぜ」、「何を」、「どこで」、「誰に」、「どように」売るのかといったことを整理して書き出します。コンセプトシートを作成することで、お店のイメージがより具体的に整理できますし、簡易事業計画書を作成する際の想定売上や想定コストを算出する根拠としても使えます。また、店舗の立地や物件を選ぶときに、探索条件がぶれず、イメージに合った店舗選びの手助けにもなります。
参考として、小さなカフェのコンセプトシートの例を示します。
コンセプトシートの例
項目 | 内容 |
---|---|
【なぜ】 コンセプト概要 |
那覇市近郊の住宅街で、見晴らしの良い建物に店を構え、アットホームな落ち着いた雰囲気で、こだわりの空間を作り、地産地消をメインとした飲み物と食事で、ゆったりとした時間を提供する |
【何を】 業種・業態 |
カフェ |
【どこで】 出店地域 |
那覇市近郊の住宅街 |
【どこで】 立地 |
見晴らしの良い高台で遠くに海の見える場所 |
【誰に】 ターゲット顧客層 |
全般的に落ち着きのある客層。若いカップル、小さな子どもを連れた若い家族、地元の住民、近隣の一人暮らしの方など |
【どのように】 特徴・セールスポイント |
|
【いくらで】 客単価 |
1,200円 |
【いくらで】 アルコール売上比率 |
20% |
【どのように】 店舗規模 |
15坪、20席 |
【どのように】 客席構成 |
カウンター:6席 テーブル:2人席×3、4人席×3 |
店舗賃料 | 10万円 |
【いつ】 営業時間 |
11:00~22:00 |
【いつ】 定休日 |
無休 |
従業員数 | 事業主1名、アルバイト4名 |
【何を】 何を |
|
簡易事業計画書を作成する
事業計画書には、開業時に必要な初期費用と開業後の売上と経費を予測し、簡易的な損益計算書を作成していきます。
飲食店の場合具体的な初期費用としては、
- 物件取得費や店舗の改装費
- 厨房機器や備品の購入費
- 食器や消耗品
- レジスター
経費の見積りについては、
- 食材費
- 人件費
- 家賃
- 水道光熱費
- その他諸経費
- 借入金返済額
コンセプトシートをもとに収益があげられるか、簡易版の事業計画書を作成する。
簡易版の事業計画書は、売上予測と想定コストを算出し、売上からコストを差し引くことで、ひと月当たりの簡易的な損益計算書を作成していきます。
売上の予測は、「客単価×1日の客数×営業日数」から算出します。飲食店の開業で、漠然と目標月商を設定する方がいますが、これでは、一日当たりの来店客数や、一日の売上目標が分からないため、経営状況の把握と改善が難しくなります。売上予測は、必ず、客単価と1日の客数から、1日当たりの売上予測を求め、それを積み上げることで、ひと月当たり売上予測を算出します。
また、売上予測は、繁盛店となることを想定した目標の売上(上位)と、標準的な売上(中位)、お客様が想定通りにいらっしゃらなかった場合の売上(下位)の3段階に分けて算出します。
開業後、お店がすぐに軌道に乗るとは限りません。お客様に来ていただき、常連のお客様が付き、売り上げが安定するには、開業から1年くらいはかかるものです。その間、最低限必要な売上額を把握し、経営状況に応じて、売上改善のために販促活動を行ったり、仕入を見直してコスト削減したりするために、下位の売上額を把握し、中位から上位を目指してお店を運営していきます。
参考として、小さなカフェの簡易事業計画書の例を示します。
1. 1日当たりの売上予想例
項目(備考) | 上位 | 中位 | 下位 |
---|---|---|---|
座席数 | 24 | 24 | 24 |
客単価 | 1,100 | 1,100 | 1,100 |
土日回転率 | 3.5 | 3.0 | 2.5 |
平日回転率 | 3.0 | 2.5 | 2.0 |
土日客数/日 (客席数×土日回転率) |
84 | 72 | 60 |
平日客数/日 (客席数×平日回転率) |
72 | 60 | 48 |
土日売上/日 (客単価×土日客数) |
92,400 | 79,200 | 66,000 |
平日売上/日 (客単価×平日客数) |
79,200 | 66,000 | 52,800 |
売上合計/月 | 2,323,200 | 1,953,600 | 1,584,000 |
2. アルバイトの人件費
項目 | 値 |
---|---|
平均時給 | 800 |
営業時間/日 | 11 |
土日労働時間合計(1名体制)/月 | 88 |
平日労働時間合計(1名体制)/月 | 220 |
総労働時間/月 | 308 |
アルバイト人件費/月 | 246,400 |
3. 借入金の返済額
項目(備考) | 値 |
---|---|
借入金 | 15,000,000 |
利率 | 1.9% |
返済年数 | 7 |
借入金返済額/月 ((借入金+(借入金×利率))÷返済年数÷12ヶ月) |
181,964 |
4. 1ヶ月当たりの収支(1、2、3の数値から、収支を算出)
項目(備考) | 上位 | 中位 | 下位 |
---|---|---|---|
売上高 | 2,323,200 | 1,953,600 | 1,584,000 |
売上原価 (売上の30%と想定) |
696,960 | 586,080 | 475,200 |
【人件費】 事業主収入 |
350,000 | 350,000 | 350,000 |
【人件費】 アルバイト |
246,400 | 246,400 | 246,400 |
人件費合計 | 596,400 | 596,400 | 596,400 |
【固定費】 家賃 |
100,000 | 100,000 | 100,000 |
【固定費】 水道光熱費 |
70,000 | 70,000 | 70,000 |
【固定費】 その他諸経費 |
200,000 | 200,000 | 200,000 |
【固定費】 借入金返済額 |
181,964 | 181,964 | 181,964 |
固定費合計 | 551,964 | 551,964 | 551,964 |
損益 | 477,876 | 219,156 | -39,564 |
物件を探す
- ターゲットとする客層の人がいるか
- お店を見つけてもらえる場所か
- 家賃は払い続けられる範囲内か
- 周囲の競合店の有無と繁盛しているか
参考となる繁盛店を調査する
前のステップで作成した簡易事業計画書では、ご自身の経験などから大凡の予測を立てながら計画づくりをしますが、この後のステップで作成する事業計画では、根拠となるデータをもとに出来る限り精緻に売上や経費を積み上げていきます。
そのために、繁盛店の調査は欠かせません。
調査では、事業計画書の裏付けとなるデータを収集することを目的に、開業するお店のコンセプトに近い繁盛店を3~5軒ほど回り、次の6つの項目についてデータを収集します。
- 客席数
- 単位時間あたりの客数、年齢層、男女比率など
- 客単価
- 従業員数
- メニュー構成、価格設定
- 店舗前の通行量
事業計画書を作成する
事業計画書は、金融機関の融資担当者や補助金・助成金の審査担当者が、資金を提供する際に「採算が取れて返済が出来るか?」や「将来性があるか?」といった視点で、妥当性を判断するための重要な書類となります。
また、開業後の経営目標の数値としても利用し、安定した事業運営にもつながる重要な計画になるので、根拠となるデータをもとに出来るだけ正確な数字で計画書を作成していきます。
融資の申込や助成金・補助金などの申請をする
開業後、常連のお客様が付き、お店が軌道にのるまでには、やはり時間がかかります。
開業資金を借り入れると、お店が軌道にのる前に、借入金の返済で資金繰りが行きづまり、材料の仕入れや人件費、家賃の支払いが出来なくなる恐れが出てきます。
例えば、開業資金が1,000万円で、全額自己資金で確保し5年間で貯蓄すると想定した場合、年間200万円、月167,000円を蓄えることになります。
はじめの準備期間では、飲食業の経験を積むだけでなく、開業資金の目安を立て、着実に自己資金を貯蓄していくことが望まれます。
計画的な資金積み立ての姿勢は、金融機関などから融資を受ける際も個人の信用として金融機関の担当者へ与える印象に大きく影響してきます。
また、開業資金を借り入れる場合は、公的制度の利用、金融機関からの借り入れなどの方法があります。
一般的に、金融機関よりも公的制度を利用した借り入れの方が、金利や担保、保証、返済期間などについてハードルが低く設定されているので、
借り入れる場合は、まずは公的制度の利用を優先して検討していきます。借入金額は、返済計画に無理のない範囲で借り入れます。
具体的には「想定利益の50%+減価償却費」を1年間の返済額の上限として設定し、借入額を検討します。
Check! | 創業支援制度ページへ |
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Check! | 創業相談窓口へ |
物件を契約する
一般的に飲食店の家賃は、売上の10%以内が理想的であると言われており、
一ヶ月で30日間営業する場合、家賃の目安としては3日間の売上と同等の金額となります。
また、その地域の1坪あたりの家賃の相場も確認し、相場と比べて高めに設定されている場合は、交渉してみることも検討します。
さらに、契約時に支払う保証金には、期間満了時に全額返却されない契約条件となっているものもありますので、その点についても注意深く確認し、返却されない保証金は家賃の一部として考えて検討します。
店づくりを行う
店づくりは、店舗のコンセプトに合わせて、内外装を検討し、店内やキッチンの広さやレイアウトなどを決めていきます。
お客様は外観などからお店の印象を判断し、入店するかどうかを決定するので、外観は来店客を獲得する重要な要素です。
オープンカフェのように開放感を高くしたり、外から店内の様子や雰囲気が分かるように透視度を高くしたりすることで、入店のハードルを低くすることが出来ます。
また、店内のレジやテーブル、カウンターの配置はお客様や店員の動線を決定するだけでなく、店内の様子に十分に目を配れるかを左右し、お客様に対するサービスの質に影響を与えます。サービスの質は、お客様が再来店し常連客となってくれるかどうかの重要なポイントなので、十分に注意してレイアウトを決めていきます。
その他、インテリアや食器類、メニューなどを、コンセプトに合わせて決めていきます。メニューについては、材料の仕入れ先や一品ごとの原価なども考慮し、飽きの来ないようにバリエーションなども考えながら決めていきます。
店づくりにおいては、
- 建築確認申請
- 食品衛生責任者育成講座の受講
- 営業許可申請
- 保健所の立ち入り検査
開店
スタッフの人数は、営業時間や売上目標、店内の作業量などから必要な人数割り出し、人件費も考慮しながら決めていきます。
人件費には、
- 給料や交通費
- 社会保険料などの法定福利費
- 福利厚生費
スタッフの募集は、正社員の場合は開店の3か月前、アルバイトの場合は1ヶ月前を目安に求人を開始し、開店の2,3週間前にはスタッフトレーニングを行って、開店に備えます。
求人の方法としては、
- ハローワーク
- 求人雑誌
- 折り込み広告
- インターネット
- タウン誌
などへの掲載などが考えられ、求人にかかる予算は30万円から100万円ほどかかることもあります。
どんな人を採用したいのか、求人予算はいくらくらい準備出来るかを考慮しながら、求人方法を決定していきます。
スタッフのトレーニングは、お客様へのサービスの質に直結し、常連客を獲得できるかどうかの重要なポイントなので、ロールプレイングなども交えながら、接客術を習得してもらいます。
スタッフのトレーニングが済んだら、いよいよ開店です。
食材の仕入れの手配を行い、素晴らしい料理とサービスで、お客様へ素敵な時間を提供しましょう!
その他創業に関する相談があれば、お気軽に創業相談窓口へお問い合わせ下さい。