記事番号: 1-4238
公開日 2009年02月18日
要 望 書
2006年5月1日に公表された在日米軍再編に係る最終報告「再編実施のための日米のロードマップ」において、沖縄における再編により約8000名の第3海兵機動展開部隊の要員と、その家族約9000名が沖縄からグアムに移転するものとされ、これに伴い、嘉手納飛行場以南の相当規模の土地の返還が可能となり、本市に所在する牧港補給地区も全面返還が検討される施設として明記されております。
今般の米軍再編は、新しい安全保障環境の下におけるわが国の安全と地域の平和、安定を高めていくための取組であり、沖縄を含む地元の負担を軽減しつつ抑止力を維持するとの考え方を基本としているものとされ、本市においては牧港補給地区の全面返還が合意されたことについて評価するものであります。また、沖縄県全体として見ても、海兵隊司令部や支援部隊の約8000人のグアムへの移転、嘉手納飛行場からの一部訓練の移転、嘉手納飛行場より南の米軍施設・区域の返還など、沖縄の基地負担軽減の方向性が示されており、評価できるものと考えております。
このような米軍基地を取り巻く環境の中にあって、本市の状況を顧みると、約274ヘクタールもの広大な面積を擁する牧港補給地区は、戦後60年間にわたり本市の発展と市民生活に大きな影響を及ぼしてきました。
復帰後30有余年を経た今日、沖縄は新しい発展の時代を迎えようとしております。本市においても、西海岸開発事業を契機として新たな飛躍を実現しようとしているところであります。このような中にあって、来るべき世代の利便と幸福を念頭に置き、本市の更なる発展を確保し、市民の生活を守るためには、今般の米軍再編に関する関連提案を真剣に受け止め、政府との協議を積極的に行っていくべきであると考えております。
特に、牧港補給地区の返還に際しては、地域振興のために必要な様々な事項について検討を加え、私たちの考える跡地利用計画に基づき、本市の地理的・歴史的特性を活かした豊かな街づくりを進めていく所存であります。
返還跡地整備事業を他市町村に先駆けて牧港補給地区で実施することができれば、返還跡地整備の先駆的モデル事業としての成果を市民・県民に示すことができます。これにより、本市の振興のみならず県全体の社会経済の発展に大きく寄与し、平和で安らぎと活力に満ちた沖縄県の実現に繋がるものと考えられます。
したがいまして、本市では返還跡地の利用の推進及び地域の振興を図る上での諸問題について、別記の施策・予算・制度等に関する諸事項を要望としてとりまとめましたのでその実現について特段の配慮をお願い致します。
1 統一的なパッケージ案の一部見直し及び制度の見直しについて
在日米軍再編に係る最終報告「再編実施のための日米のロードマップ」において、本市に所在する牧港補給地区は全面返還が検討される施設として明記されています。しかし、個別の再編案は統一的なパッケージとなっており、その中で沖縄に関連する再編案は、相互に結びついているとされています。
報告書は「2007年3月までに統合のための詳細な計画を作成する」としており、返還スケジュールは地権者の不安を払拭するためにも、また、返還跡地の整備事業を進めていく上でも極めて重要であることから、地元関係者の理解が得られる返還スケジュールを示すべきであると考えます。
加えて、本市に所在する牧港補給地区は地域振興、経済振興においてもポテンシャルの高い場所に位置し、各方面からも跡地利用に大きな期待が寄せられております。
つきましては、詳細計画において施設ごとの返還スケジュールを作成し、牧港補給地区については下記の事項を反映した返還計画とし、合わせて跡地の利用促進及び円滑化に係る諸制度の見直しについて、次の事項を要望いたします。
(1) 牧港補給地区の返還
約274ヘクタールの広大な面積を擁する牧港補給地区は、戦後60年間にわたり本市の発展と市民生活に大きな影響を及ぼしてきました。市においては今後返還を見据え、返還跡地の利用計画の策定を行い、地権者の利益を損なうことが無いように意を払いながら、新たな本市の発展の核となる都市の形成を目指して整備を進めていく所存であります。
つきましては、本市が実施する地域振興を前提とした諸事業の円滑な推進を図るため、返還の時期については当該施設の移設に掛かる適正な期間を考慮し、かつ、他施設の移設の進捗とは連動しない返還スケジュールによる計画的な返還実施のため、統一的なパッケージ案の一部見直しを要望します。
あわせて、跡地の利用促進及び円滑化のための支援等については、跡地利用計画策定の進捗及び内容を精査した後、また、地域振興のために必要な諸施策等については、今後、適切な時期に諸支援措置等を要望してまいりますので合わせてお願いいたします。
2 那覇港湾関連事業の促進について
観光・リゾート地としての魅力を高め、県民生活の安定向上を支え、地域の産業振興に資する空港、港湾、陸上交通等の社会資本の整備を進め、有機的な交通体系の確立を図ることが、本県の持続的発展の土台となります。
つきましては、体系的な道路網の整備の計画的推進による交通円滑化のための取り組み強化、及び那覇港浦添埠頭地区の国際流通港湾としての機能強化を図るため、次の事項の整備促進を要望いたします。
(1) 臨港道路浦添線
鉄軌道を持たない本県の陸上交通事情は益々深刻さを増し、とりわけ、那覇市から浦添市以北にかけて縦貫する国道58号の交通量は九州一といわれるほど交通事情が悪化しており、県民生活に深刻な影響を与えています。
一方、那覇港の港湾貨物は、慢性的交通渋滞が続いている市街地の経由を余儀なくされている状況にあります。国道58号の交通渋滞の緩和と那覇港の物流機能の効率化・円滑化を図るため、臨港道路浦添線の早期整備への支援を要望します。
(2) 西海岸道路(浦添北地区)
沖縄本島の交通の大動脈である国道58号の浦添市区域は、九州・沖縄の一般道路で最も交通量が多いうえ、慢性的に交通が渋滞し、本県経済の大きな足かせとなっています。国道58号の渋滞緩和は、浦添ふ頭地区の埋立地や牧港補給地区における活性化のみならず、本県経済の自立的発展を推進していくうえで、最も重要な課題であり、かつ焦眉の急と認識しています。そのため、国道58号の渋滞緩和を図るとともに那覇空港及び那覇港等の交通結節点との連結も担う浦添北道路を、是非とも平成21年度までに供用し、本県経済の礎を築くよう早期整備を要望します。
(3) 那覇港湾整備(浦添埠頭地区)
沖縄の自立経済の一翼を担う那覇港浦添埠頭地区は、国際物流産業を戦略的に展開する国際流通港湾機能ゾーンとして早期整備が期待されています。また南の国際交流拠点形成を目指すコースタルリゾート計画は、浦添市民が長年待ち望んでいるプロジェクトであり、両事業を二眼レフ構想と位置づけ、本市の将来の拠点としての整備を図ります。
しかしながら本市西海岸域は、戦後60年にわたり、牧港補給地区の制限水域として提供され、市・県民は海浜に親しむ機会が奪われてきました。本市の西海岸開発事業を着実に推進するため、制限水域の返還と浦添埠頭地区の早期整備への支援を要望します。
3 新規事業化について
復帰後「本土との格差是正」と「自立的発展の基礎条件の整備」に取り組み、社会資本や生活環境の整備が積極的に進められた結果、現在、産業面においては観光・リゾート産業がリーディング産業としての地位を確立しております。今後も、活力ある自立型経済の構築に向けた重点産業として戦略的な振興策を展開し産業間の相乗効果による経済全体の発展を図ることが求められています。
つきましては、質の高い観光リゾート地形成に向けて、国内外の観光客受入体制強化のための空港整備、観光地のネットワーク化及び公共交通の利便性を高めるための公共インフラの整備のため、次の事項の新規事業化を要望いたします。
(1) 那覇空港滑走路
那覇空港は、本県の空の玄関として県民を始め、国内外から多くの観光客が利用する主要地域拠点空港として、県経済を支える重要な役割を果たしております。一方、今後も順調な伸びが予測される航空輸送需要に対して滑走路1本で運用していることから、拡張整備の必要性が検討されています。また、近い将来の入域観光客数1千万人に向けて、本市ではその観光リゾートの拠点として西海岸開発事業リゾート地区と牧港補給地区跡地の開発計画を推進してまいります。本県が目標とする国際交流・協力の拠点形成や観光リゾート地としての魅力向上、地域の産業振興などに大きく寄与する那覇空港の拡張整備について、滑走路の増設の事業化を要望します。
(2) 沖縄都市モノレール延長事業(浦添市提案ルート)
本県の定時定速の公共交通機関軸の形成のため、首里駅から沖縄自動車道までの延長ルートが、現在、県において検討されています。本市の提案するルートは、琉球王国発祥の場である浦添グスク、浦添ようどれなどの王都の遺跡が沿線に位置し観光地のネットワークの強化はもとより、事業の早期化、交通結節点周辺整備の円滑化、大規模返還跡地からのアクセス性及び利用増大によるモノレール事業の採算性等の優位性が上げられます。浦添市提案ルートによる沖縄都市モノレール延長の事業化を要望します。