【ROAD】19 西村悦子さん(30.03)

記事番号: 1-2425

公開日 2018年03月05日

西村悦子さん



美しい声に心をのせて エールを送るウグイス嬢



 毎年2月に浦添で行われる東京ヤクルトスワローズ(以下ヤクルト)の春季キャンプ。期間中の練習試合で13年間、ウグイス嬢を務めているのは西村悦子さん(53)。ウグイス嬢とは場内アナウンスを担当する人のことで、ウグイスのように美しい声であることからそう呼ばれています。

 西村さんの本業はラジオのパーソナリティや結婚式の司会を務めるフリーアナウンサー。当初はキャンプ前の交流会の司会のみ行っていましたが、当時の古田監督が「ファンサービスの一環として場内アナウンスを行います」と発表したことがきっかけで場内アナウンスを務めることになりました。実際にやってみると声のトーンやアクセントなど普段のアナウンスとは異なる点が多く、もともと野球のルールや試合の流れもわからなかった西村さんはとても苦労していました。



「野球については球団のスタッフが教えてくれましたが、発声方法については自ら研究するしかなく、練習後に他のチームのキャンプまで足を運び、実際のアナウンスを聴きながら試行錯誤を重ねていきました」と西村さんは話します。

 情報を正確に伝えると同時に冷静な判断力が必要となるウグイス嬢。選手名の読み方やポジションなどの下調べはもちろん、試合中も投球練習をしている選手やベンチの様子を見て、次の流れを予測しながら進行をしていきます。選手交代のときは審判から口頭で伝えられ、すぐにメモを取ってアナウンスを行わないといけないため緊張感が走ります。

 



アナウンス用資料の数々

 



「急な対応を求められることもある難しい仕事ですが、頑張っている選手の姿を見ていると、自分もまだまだ努力しなきゃと感じます」と語る西村さん。個人の努力だけではなく、監督やチームとの相性や巡り合わせ、結果を出すべきところで実力を発揮できる力が必要とされる厳しいプロ野球の世界を知るにつれ、自分のできる形でヤクルトを応援したいという気持ちが強くなりました。「1年に1回しか機会のない仕事だからこそ、その一瞬一瞬を精一杯やりたい。毎年改善したいことがでてきて、次こそはと続けているうちに気づいたら13年経っていました」と西村さんは振り返ります。



 西村さんの今後の目標は、後継者の育成にも力を注いでいくこと。ボイストレーニングの講座を開き、発声の成り立ちや表情のトレーニング方法、気持ちの持ち方を教えるなど活発に取り組んでいます。

「いろいろな経験を通して学んだことを若い世代に伝えていきたい。アナウンスの魅力を知って欲しい」と力を込めます。

「司会もウグイス嬢も気持ちを込めてアナウンスをすることに変わりはありません。新しくAI技術によるアナウンスも開発されていますが、人の声でしか伝わらない温かさがあります。声で相手の気持ちを変えることができるんです」とアナウンスの魅力を力強く話す西村さん。ただ文章を読むのではなく、選手を応援する気持ちを込めて、これからも美しく温かい声を届けていきます。

 



アナウンスの様子

 



PROFILE

西村悦子(にしむら・えつこ)さん(53)

 フリーアナウンサー。アイリッシュハープ奏者。FM ラジオパーソナリティ、那覇ハーリーの実況などで活躍。英国で語学、演劇、舞台を学ぶ。浦添市美術館の開館式典(平成2年)の司会を務める。



 


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