☆南米からのおたより☆12月号【ブラジル】

記事番号: 1-14771

公開日 2026年01月14日

更新日 2026年01月19日

浦添で育てた羽、ブラジルでひらく「翼」

 

2024年度南米移住者子弟研修生

當間 ベアトリス マユミ(ブラジル)

 

みなさん、こんにちは!ついに今年最後のおたよりとなりました。

ちょうど一年前の今頃、私はブラジルへ戻る準備をしていました。この帰国がどんな意味を持つのか、そのときは全く想像できず、決して簡単なものではありませんでした。でも、仕事がとても大変だった一方で、良いこともたくさんありました。地域活動により深く関わるようになり、新しい人との出会いもあり、「うりずん会※1」の運営にも携わることができ、多くの新しいことを学びました。

※1「ブラジル沖縄県留学生研修生同窓会」のことです。

 

このおたよりの連載を締めくくるにあたり、今日は「チジュヤー:私たちの涙が谷を越えるあいだ、その歌を響かせる鳥たち」という名の行列について書こうと思います。この行列は2025年12月6日、サンパウロで開催された「第36回サンパウロ・ビエンナーレ」で行われました。このプロジェクトの創作の中心となったのは比嘉美和さん、金城ヴィクトルさん、當間ひろみさんです。沖縄系ブラジル人の行列は「サンパウロ・ビエンナーレ」という世界最大級の芸術祭で作品を展示した、初の沖縄出身アーティストである石川真生さんを祝福するものでした。プログラムには、伝統舞踊やコンテンポラリーダンス、ハジチ、空手、音楽など、ブラジル沖縄コミュニティのアーティストが参加しました。行列はエイサーを着想源とし、「チジュヤー」のパフォーマンスでは、大海原を渡り記憶や感情、未来をつなぐ旅人が呼び起こされました。




「第36回サンパウロ・ビエンナーレ」における石川真の作品展示の様子
© Natt Fejfar / Fundação Bienal de São Paulo。

 

10月、私にハジチを施してくれた幼なじみでハジチ職人のヒロミさんが、ビエンナーレのパフォーマンスに参加できるかと連絡をくれました。彼女は、沖縄出身アーティスト Awich の「翼」という曲を、生歌とギターで演奏してほしいと頼んできました。この曲は美しいメロディーと力強い歌詞が特徴ですが、特にラップが2か所あるため、自分に歌えるか不安でした。でも何度か聴くうちに、挑戦してみようと決めました。ヒロミさんから聞いていた限りでも、このパフォーマンスはきっと大きな意味を持つものだと感じ、たとえ難しくても参加したいと思いました。こうして最初のリハーサルの準備が始まりました。

 


2025年10月。ハジチグループのリハーサル。



2025年11月。ハジチグループのリハーサル。
 

時間が経つにつれ、私たちは行列全体のスケールを理解し始めました。私たちハジチのパフォーマンスに加え、さまざまな芸術グループが参加しました。最終的には、エイサー、チョンダラ―、獅子舞、空手、ブラジル現代音楽、ジカタ、ハマチドリ、沖縄現代音楽など、多彩なグループが集まりました。行列はビエンナーレ会場全体を進み、3階に展示されていた石川真生さんの作品へとつながっていきました。



2025年12月6日。行列の第一幕。Victor KinjoとEdu ColomboがVictor Kinjo作曲「Permissão」を歌い、エイサー団体が踊る。



行列の第一幕。大城ディエゴと加賀津リカルドによる三線演奏を伴う空手の演武。

 

ハジチのグループの何人かは見たことがありましたが、話したことはありませんでした。それでも、まるで私たちが共に祖先とのつながりを取り戻す過程にいるかのように、すぐに深くつながることができました。ハジチのパフォーマンスには、約30名の女性やジェンダー・ディシデントの仲間が参加しました。私たちの役割は、渦のような動きで空間を開き、三線を弾くブリュナ・オシロさん、踊りの美和さんとアゲナ真弓さんによる「チジュヤー」のパフォーマンスへつなげることでした。そしてその後に私が歌う「翼」が続きました。ここに曲の歌詞と、私がポルトガル語で書き直したラップ部分を記します。



行列の第二幕。ハジチ・グループのパフォーマンス。

 

 

 

「翼」の歌詞:
サヨナラがまた僕らを
海をこえ迎えに来る
許される限り遊ぼう
大空を飛び交う影に
僕らの夢乗せてみるんだ
Imagine breaking through the sky into our future
As we chase the rainbow
苦しみは let it go
負けないように大声で歌うけど
引き裂く音が
遮る言葉
かき消されたありがとう
だから笑顔で手を振って
あの窓から見るこの島はいったいどんな色?
自由に飛んでみたいんだ 青く広がる空を
失くしたものとか ah
会いたい人とか
さぁ 見つけに行こう
僕らも翼広げて
大きな影たち飛び回る空に憧れ
あの雲が動けば we just know that it's gonna rain
タソガレにキラキラと光り落ちる drips
この島からの気まぐれで美しい gift
フェンスごしに違う国に囲まれた運動場
毎朝 聞こえる君が代と star spangled
Kick push 感じる 普天間の丘に吹く風
No matter what you are みんな同じ人間なんだね
毎日歩いて 笑って 泣いて また笑って
好きなものが変わって 嫌いなものも変わって
What did you say? 君の言葉かき消した airplane
なんでもないよって またすぐ会えるからって it's okay
恐れるものは it's okay
何もないはず
僕らだけの場所でまた会おう
だから笑顔で手を振って
あの窓から見るこの島はいったいどんな色?
自由に飛んでみたいんだ 青く広がる空を
失くしたものとか ah
会いたい人とか (yeah)
さぁ 見つけに行こう (we know who will find it, you see, let's go)
僕らも翼広げて (huh)

 

 

私がポルトガル語で書き直したラップ ラップの日本語訳:
resistir pelas que vieram
pelas que já foram
por nós, todas nós
tentaram apagar nossos símbolos
os tons de azul do céu, do mar, do índigo
abro os braços, recolho os cacos
ichariba choode
lado a lado
da faixa de gaza ao rio
genocídio, chacina
mundo doentio
olho pros lados, todos cercados
nos encurralamos em nossos abraços
sombra e luz e chuva e vento
um champuru de sentimentos
se somam à beleza das cores da ilha
das dores, das trilhas
das perdas, partilhas
ainda, nos corações as batidas
ecoam mais forte que o som das turbinas

来た者たちのために
去っていった者たちのために
そして私たち皆のために 抗い続ける

私たちの象徴を消そうとしても
空の青 海の青 藍の青は消えない

両腕を広げ 砕けた欠片を拾い集める
イチャリバチョーデー
肩を並べて

ガザの地からこの川へと続く
ジェノサイド 虐殺
病んだ世界

周りを見れば すべて囲まれて
私たちは互いの抱擁の中に逃げ込む

影と光 雨と風
入り混じる思いはチャンプルーのように
島の色彩の美しさに重なり合う

痛みの跡 歩んだ道
 失ったもの 分かち合ったもの
それでも胸の鼓動は
エンジンの轟きよりも強く響き渡る

 


行列の第二幕。ハジチ・グループのパフォーマンス。

 

後半のリハーサルでは、もう一曲追加することにしました。「安里屋ユンタ」を、より現代的な歌とギターのバージョンで演奏することにし、グループに提案したところ、みんなが気に入ってくれて、パフォーマンスの最後に組み込むことになりました。渦をほどき、3階の石川真生さんの作品へと向かう行列を導く曲となりました。作品前に到着すると、女性たちのグループが「てぃんさぐぬ花」を演奏し、私たちはハジチを施したおばあさんの写真の前に手袋や小物を置きました。祖先を敬う祭壇のようなものを形作ったのです。

 


行列の第三幕。行列は三階へ向かう。

 


行列の第三幕。石川真生の作品を称える。

 

リハーサルから本番まで、そのすべてが本当に美しいプロセスでした。ブラジルの沖縄コミュニティはとても活動的ですが、このように広く可視化された空間をコミュニティの外の観客の前で占めるのは初めてでした。そして、これほど多くの芸術グループが連携してひとつのパフォーマンスを作り上げたのも初めてでした。これはきっと始まりにすぎません。

 


行列の第三幕。カチャーシーと獅子舞で公演を終えました。

 

この行列に参加できたことは、今年を締めくくるとても素晴らしい体験であり、このおたよりの連載を終えるにあたっても、美しい締めとなりました。今年はほとんどギターを弾くことがありませんでしたが、この行列のおかげで、久しぶりに大好きな音楽に戻ることができました。Awich の力強い曲を歌い、ポルトガル語版のラップを書き、ハジチの仲間と一緒に演奏しながら踊りを見守る時間は、本当に心を揺さぶられるものでした。

 


パレードに参加するコミュニティの全アーティスト。

 

みなさんが、今年の終わりを穏やかに過ごせますように。忙しい日々から少しでも休めて、来年がよい始まりとなりますように。ここでおたよりを書く時間が恋しくなると思います。

それでは、どうかお元気で。愛をこめて。

マユミ

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