有限会社沖縄紙業『日々のコミュニケーション×前例に捉われない体制整備から、自然環境と会社双方の持続可能性を追求する』

記事番号: 1-12826

公開日 2024年11月11日

更新日 2024年11月12日

 

 

前例がなくとも、今後要望があることを想定した体制づくりを推進

 

お話を伺った営業の大仲良樹さん(左)、島袋桃子さん(右)

 

働きやすい職場づくりに着手した経緯

 

 ISOの環境マネジメントシステム規格(※)の取得に向けて、社内でのマニュアルやルール作りを今年から始めました。社員が働きやすい環境を、今は少しずつ整備している段階です。

 これまでは社員の高齢化も進み、人手不足もあってなかなか積極的に取り組める状況ではありませんでした。私たちのような若い社員が入社してきた結果、社長から「若い力で現状を変えてくれないか。会社のため、社員のためにもっと何かできないか。」という希望もあり、役員も含めて話し合いをして、ISOの規格の取得にチャレンジしてみよう、ということになりました。

 

※ISOマネジメントシステム:国際標準化機構(ISO)の定めた規格のうち、会社や団体の理念の実現、経営目標の達成や問題解決に向けて、組織を管理する仕組み(マネジメントシステム)に関するもの。事業の種類や組織目標の方向性によってさまざまな種類がある。沖縄紙業が取得を目指しているのはISO 14001(環境マネジメントシステム)であり、組織活動の環境への影響の軽減、サステナビリティ(持続可能性)へ貢献するための組織体制の整備が求められる。

 

業務スケジュールについて

 わが社は日曜日を統一した休業日として、残りはシフト制を採っています。古紙などを回収するドライバーは朝早くて4時、5時ごろから出勤し、各々の担当するエリアや企業へ回収に出向きます。その他は8時30分~17時30分の間で、本人の希望を踏まえて調整していくといった仕組みです。

 ただ、やはり人手不足は解消されていませんので、シフト制であることを生かして、求人では週休3日での勤務や、勤務時間も1日5時間から可能ということを記載しました。実際に応募もあり、運用しているところです。もちろん以前から働いている社員、パートの方も対象です。

 

子育てとの両立

 子どもを持つ社員、パートさんには、例えば行事がある、子どもを病院に連れていく等の理由で、シフトの調整や時間休を取得できるようにしています。例えば退勤時間を早めたり、業務時間帯の間に作業を抜けるなど、希望に沿えるよう対応しています。
 産休や育休については、女性社員だけでなく、男性社員の育休取得も可能です。ただ、社員の年齢層が比較的高く、入社したとしても育休を必要とする年代ではない関係で、男性の育休取得の前例がない状況です。今後、育休の対象になる社員がいたり、育休取得の要望があったりすれば、男女問わず対応していく準備はできています。

 

 

体力が必要な業務だからこそ、会社で健康維持のサポートを。

 現状第一に取り組んでいるのが、社員の皆さんの健康管理です。今までももちろん年1回の健康診断を社員に受けてもらっていましたが、結果が出てそれで終わり、という状態だったと思います。現在は保健師が常勤しており、結果が出た後に社員一人ひとりの改善点や、健康面の不安をフォローしています。例えば、血圧が高い社員には、会社で購入した血圧測定器で毎日この時間測ってみましょう、など日常での意識付けをしています。社内の掲示板を用いて啓発もしていまして、血圧がなぜ高くなるか、塩分が高い食事などを示し、定着を図っています。

 万が一体調が悪くなったり、定期的な受診が必要になったりした際には、両立支援を積極的に取り入れ、我々でシフトの調整をし、社員が自身の体を大切にできるような雰囲気や環境を整えています。

 例えばドライバーの社員は50代が主力メンバーで、古紙などの回収、長時間の運転といった体力が求められる業務をこなしてくれています。ほかの社員、パートの方も含め、ひとりひとりが健康に、長く働けるためには、健康面でのフォローが不可欠です。

 また、社員が健康で元気に、安心して働けるということは、作業効率も上がって、生産性の向上にも繋がります。そのためにも、長時間の運転を伴うドライバー社員に向けては、始業前のラジオ体操を導入し、業務に備えて体を温め、眠気を覚ますことで早朝の時間帯の安全運転に繋げています。加えて、車内空調の整備やドライブレコーダーの設置といった、労働環境整備に取り組んでいるところです。

 

 

(写真)社内の掲示板や扉に、健康維持や熱中症予防のための情報を掲示し、周知を図っている。

血圧測定器やミネラル補給のタブレットなども購入し、体調や健康の管理を会社からサポートしている。

 

(写真)駐車場にずらりと並ぶパッカー車。古紙などの資源の回収には欠かせない車両であると同時に、ドライバー社員が運転の間に過ごす職場とも言える。

 

社員からのアイデアやチャレンジを尊重し、人材確保にも繋げる

 

社長を含めた社員間のコミュニケーションの機会を絶やさない

 回収に行っているドライバーを除いて、社長も交えて出勤している社員全員で毎朝の朝礼を実施しています。その際、1人ずつ公私に関わらず些細な内容でもいいので発言する機会を設けています。それに対して社長からコメントやリプライがあればその場で共有する、という流れがあり、こうした毎朝のルーティーンを作ることで、発言しやすい雰囲気を作ることができていると思います。

 それによって、不安や心配をほかの社員に共有したり、相談したりできる環境が作られていると感じています。私たちもほかの社員とのコミュニケーションを密に取るように心がけています。

 例えば社員から業務などに関する提案があれば、社長に直接伝えられるような環境を整えるなど、社長と社員の間で話しにくい、ということがないようにしています。

 そのおかげか、離職率も低く、長い間働いている方ばかりです。パートさんには外国人の方もいらっしゃるのですが、13年働いてくれています。

 そうした環境なので、何か業務改善や地域貢献につなげられるアイデアがあれば、スタッフから提案して実現に繋がることもあります。以前、ある社員の子どもの通う小学校が職場体験を受け入れてくれる企業を探しているということで、社員から直接社長に伺いを立てて、まだ先ですが、依頼があれば受け入れるというところまで話が進んでいます。

 また、夏休み期間中に学童クラブより2件、5人ずつを目安に職場見学を受け入れました。わが社は車両の出入りが激しく、大人数での見学は安全管理上難しいので、少人数の高学年で、引率者がいれば受け入れるという方針でいます。

 加えて、昭和製紙様は受け入れ体制がしっかりしているので、わが社からのリサイクルの流れの続きを見られるという点で、そちらをご案内することもあります。

 

性別や年齢にかかわらず、挑戦できる環境整備

 ドライバーという職種へのハードルの高さとしては、中型免許の取得があると思います。昔は普通免許の範囲内でパッカー車を運転できたのですが(※)、今は普通免許をとったら普通自動車、しかもAT(オートマチック)のみが運転でき、パッカー車は運転できません。免許がないことで、なかなか20代、30代のドライバーが入ってこないです。

 そこで、わが社で一番若いドライバーの社員には、本人の負担が減るよう一部会社負担で中型免許を取得してもらいました。また、フォークリフト運転免許の新規取得は、全額会社が負担しました。今後も助成金等を用いつつ、対応していきたいです。

 わが社の10年後を考えたときに、若い社員に入ってもらうには、どうすればよいか、できることを実践していきたいと思います。

 

※中型免許は2007年に新設され、それ以前は普通免許で8トンの車両まで運転できた。2017年にはさらに準中型免許も設けられ、区分がより複雑になっている。2017年3月12日以降に免許を取得した場合、普通免許で3.5トンまで、準中型免許で7.5トンまで、中型免許で11トンまでの車両の運転が可能となる。

 

 

社会貢献を通じて業務への理解に繋げる

 

トイレットペーパーの寄附、こども食堂での出張授業

 地域貢献は、わが社の経営理念として掲げておりますが、社長はリサイクルをみんなに広めたい、一つでも多くの資源を拾って燃やすごみを減らしたいという想いがすごく強い方です。

 ですので、トイレットペーパーの寄贈を通してリサイクルの大切さを伝えると同時に、小さい時からリサイクルの考え方を身につけてもらい、大人になってもリサイクルが当たり前になってほしいということで、私たちが子ども食堂に出向いてリサイクルの授業をしています。

 子どもたちに集めてもらった紙を、我々がパッカー車で回収に行き、積み込み風景を子供たちに見てもらいます。パッカー車というと聞きなじみもなく、ごみ収集車のようなもの、くらいのイメージだと思いますが、実際パッカー車を持って行くとみんな喜んでくれて、パッカー車の運転手になりたいという子どももいます。

 古紙の回収の様子から、分別などの作業風景、再生紙になるまで、リサイクルの一連の流れを動画も活用しながら、子どもたちに見てもらっています。家庭の事情などで体験が乏しい子もいっぱいいるということで、SDGsやリサイクルに関しての体験をして欲しいという想いもあり、毎月実施しています。

 このような取り組みを継続していく中で、やはり我々も子どもたちに間違ったことを教えてはいけないので、念入りに情報収集、勉強をしていきます。紙の分別だけでも複雑で、リサイクルできるもの、できないもので仕分けるのですが、正しい知識をもって日々の業務に臨めるよう、我々も理解を深めて、社員へ周知するようにしています。

 そして、沖縄紙業の取り組み内容を朝礼や会社のコミュニケーションツール(アプリやSNS、掲示物)を利用して社員へ伝えることで、「リサイクル」への意識を高めることができ、またリサイクル業であるわが社で働くことに誇りが持てるよう、働きかけています。

 

(写真)実際に寄附しているトイレットペーパー。包装にはリサイクルの過程がわかりやすく説明されている。

 

(写真)受験生応援プロジェクトとして、絵馬型マグネットに受験生の合格祈願を書いてもらい、実際に神社にて祈願したものをバスの座席背面等に貼り付ける活動を続けている。

 

今後の労働環境整備に向けた意気込み

 先代や社長、管理職のメンバーが培ってきた社員との「コミュニケーション」を大切に、また社長より常に教育されている「プラス発想」をテーマに私たち次世代も常に会社が良い方向に向かうよう、前向きに突き進んでいきたいと思います。

 最近では人材不足が問題となっている中で生産性向上のための取り組みを考え、機械の導入や健康管理に注力し、更に時間外労働の削減へ向け働き方改革を行っていっているところです。

 事務作業のデジタル化、健康面では熱中症対策として工場へミストの整備や工場の屋根の断熱コーティング、回収ドライバーの毎朝のラジオ体操も導入しました。

 規格取得目標にはISO14001に加え、健康経営優良法人も追加し、総務での時間外労働の管理徹底、時間外労働削減のためのシフト管理や人材派遣の活用などを行っています。更に始業時間も見直し、9時~18時から8時半~17時半へ変更しました。

 人材は宝であり、今後も従業員の負担軽減のため、コミュニケーションをとりながら労働環境を整備していきたいです。

 

 

 

★社員の方へインタビュー★

 

【1】長濵光恵さん(工場勤務、パートタイム)

 

Q1 仕事内容を教えてください。

持ち込まれた古紙などの資源の分別、車の誘導です。

 

Q2 これまでのキャリアについて

わが社でこれからキャリアを積んでいきたいと思います。

 

Q3 仕事でやりがいを感じるところはどこですか。

お客様との会話で笑顔を見られた時や、リサイクルを通じて環境問題に取り組めていることです。

 

Q4 職場の働きやすさのポイントを教えてください。

子どもの学校行事や急な体調不良でも休みがとりやすい事です。

 

Q5 今後の意気込みをお願いします。

仕事に対するやる気だけは負けないので、精一杯取り組みます。

 

 

【2】増谷直樹さん(ドライバー、社員)

 

Q1 仕事内容を教えてください。

 朝出勤してから朝礼を行い、社員一同で予定を確認し共有した後、回収車でお客様のところにある古紙などの資源をルート回収していきます。

 夕方帰社した後は、工場内の選別作業、掃除などを行います。

 

Q2 これまでのキャリアについて

 東京都で廃棄物リサイクル業を数年行っていました。回収車でお客様の元へルート回収しに行き、主に可燃ごみ、不燃ごみ、段ボール紙類、缶、ペットボトルを回収して居りました。

 

Q3 仕事でやりがいを感じるところはどこですか。

 私は沖縄県が大好きな東京都からの移住者です、ですので、沖縄県に、社会に貢献出来るリサイクル業を行うことが出来て、日々やりがいを感じています。

 

Q4 職場の働きやすさのポイントを教えてください。

 社員、スタッフ同士の仲の良さだと感じています。何かあったときの社員同士のフォローのし合い、何よりも、チームプレイを大切にする活気ある暖かな職場だと思います。

 

Q5 今後の意気込みをお願いします。

 私は過去に作業中自分のミスで回収車に右手を挟まれる事故をおこしました。

一生障害が残る、自由に動かせないと診断され、日々落ち込み、考えました。

しかし1度の人生、やってみないと分からないと思い、リハビリを行い続けました。

その成果が有り、日々の生活に支障が無く右手を動かせる様に成長しました。約2年かかりましたが、多大な迷惑を会社にかけた私を、沖縄紙業は再び温かく迎え入れてくださいました。

 この2年間を私は忘れません。何事も継続しあきらめなければ、望んでいたことは叶うと。過去に学んだことを活かし、社会へ、未来ある沖縄県に貢献していきたいと思います!

 

代表者メッセージ

 

 今まで、社員の労働環境改善のために様々なことに取り組んできました。

 先代の時代には手選別で古紙の選別を行っており、前かがみになり手選別することで腰痛が絶えませんでした。しかし、選別機を導入し、大幅に選別時間の短縮、腰痛改善し業務効率化に繋がりました。

 また以前は資源の回収に使用するパッカー車が中古車ということもあり、クーラーの効きが悪く社員の熱中症などの問題もありました。そこで我が社ではパッカー車をすべて新車へ変更し、メンテナンスにも力を入れることにしました。更にコーティング、ラッピングも行い、綺麗なパッカー車を整備しました。そうすることで空調が整い、バックモニターやドライブレコーダーが整備され、回収ドライバーのモチベーション、安全運転意識も向上しました。
 どうしても「ゴミ収集車」というものは汚いイメージが強いです。しかし沖縄紙業の「パッカー車」を見ることでそれを覆したいと考えています。朝礼では我々の仕事はリサイクルへ貢献している誇らしい仕事であり、新車の輝いたパッカー車に乗ることで、更にプライドを持ってこの仕事に就いて欲しいということを社員に伝えています。

 今後も「リサイクル」という誇らしい仕事へプライドを持って取り組めるよう効率化し、労働環境を整備し、常にプラス発想で会社を改革していきたいと思います。

 

 

代表取締役 大仲秀樹

おまけ~ヤギを飼う理由もリサイクル志向~

リサイクル事業を展開する有限会社沖縄紙業。

「ゴミをなるべく減らす」ことにかける熱意は、取材する中で存分に伝わってきましたが、終わり際になんと会社でヤギを飼育しているとのお話を伺いました。
「そもそもなぜヤギを飼い始めたのですか?」とお聞きすると、
「裏の駐車場周りの除草を人手でやってしまうと、その草がゴミになってしまうので、ヤギに食べてもらって除草できないかと考えたからです。」
との答えが。様々な場面でごみの削減やリサイクルを心掛ける姿勢は、取材する私共にとっても大変勉強になりました。

ヤギは番(つがい)を飼育し、子どもも生まれ、現在のメンバーは3頭。除草に一役買っていると同時に、社員や見学に訪れた方の癒しになっているようです。(筆:取材担当スタッフ)

 

(写真)小屋から一斉に出てくるヤギたち。社員の宮城さんは大変懐かれており、ヤギの飼育係も務める。

会社概要

有限会社沖縄紙業

設立:1974年6月
従業員数:28名(令和6年7月)
代表者:代表取締役 大仲秀樹
業務内容:1. 製紙原料の仕入れ・加工・販売
     2. 一般廃棄物及び産業廃棄物の収集、運搬業

公式HPはこちら【外部リンク】

 

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