記事番号: 1-12625
公開日 2024年09月19日
沢岻イリヌカーの伝承
近世琉球(1609~1879年)の間切・村では地域の特産物や食材などを王府に納める「手形入れ」と呼ばれる制度がありました。
沢岻にはテナガエビ、川エビ、フナ、ウナギなどの食材調達を命ぜられていたといいますが、早急に納めるよう急がされ大騒ぎでした。それが度々だったので、これらの生き物を沢岻イリヌカーで飼って突然の命令に備えていたと伝われています。
沢岻と王府との繋がりや人々の創意工夫が窺える貴重な文化財として令和5年4月7日に市指定文化財に登録されました
形 ・ 造り
沢岻イリヌカーは、琉球石灰岩と島尻層泥岩の不整合面から湧出する井泉で、水溜め、平場及び階段等により構成され、現在も一定の湧水量があります。
本井泉は、琉球石灰岩の岩陰に相方積みの石積みで水溜めを造り、内部に吐水口の孔がひとつ設けられています。水溜めの前方は、平場を構成する琉球石灰岩の一枚岩を被せることにより、平場の下にも水溜めが部分的に展開する特徴的な造りがみられます。
平場の両側面には相方積みの石積みが巡り、一部の石積みに崩落がみられるものの、全体的に井泉の保存状態は良好です。本井泉の石積みの構築時期は不明ですが、井泉自体はその伝承から近世琉球までさかのぼるものと考えられています。
(水溜を水抜きした様子)
「手形入れ (てがたいれ)」 とは?
近世琉球の賦課(税金) の一つで、「雑物」と呼ばれた野菜・魚介類などを納めるものです。不定期なもので、王族、王府高官、王府機関が村に対し地域の特産物や食材を臨時に徴収しました。雑物の徴収には基本的には対価が支払われました。